ぐーばる開発への想い 健康経営の実現に向けて

株式会社ファナティック 代表取締役 内 義弘

-先程、貴社サービス「ぐーばる」について講演を聞かせて頂きました。改めて、ぐーばるを開発されるきっかけをお聞かせ下さい。

 きっかけは当社の幹部社員が定期健康診断で異常が見つかり入院騒ぎになったことでした。 その社員は30代後半で一見健康そうでしたので、健康診断の結果に大変驚きました。

 この経験が原点です。

-そのご本人に自覚は無かったのですか。

 本人と話しをしましたが自覚はありませんでした。原因について思い当たることがないと言うのです。しかし、私は彼の食事が原因ではないかと感じました。彼は毎日同じ食事を食べていたからです。

-日替わりではなく同じ料理ということですか?

 そうです。毎日近くの牛丼店で牛丼を買って食べていました。他の社員で毎日カップラーメンを食べている者もいました。



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-男性社員ですか?

 はい、男性社員です。それで、全社員の過去の健康診断結果を調べてみますと、30代後半~40代の男性社員に著しく数値が悪くなる者が多いことを知り、食事の影響だと思いました。

 当社周辺(東京都千代田区内)の飲食店は安くはありません。お昼でも1000円前後はかかります。毎日、同じ食事で済ましてしまう理由の一つは食費負担だろうと考えました。

ーこの辺りの飲食店でランチをするには1000円前後はしますね。パラソルの下で販売するお弁当やコンビニに行列している光景を見かけます。

 後日知ったことですが「昼食難民」という言葉があるそうです。お昼休みに食事に出かけても満席で入ることができない。多くの人が働く大型ビルではビル内にレストランはあるものの高くて利用できない。 ビル周辺も地価が高いため手頃な飲食店が近くにない。人が多いためお昼時間はエレベータが満員で乗ることも出来ない。など食事が困難な環境に置かれているケースがあり、このような人を「昼食難民」というそうです。

ー「ランチ難民」とも呼ばれていますね。食費負担だけでなく、そもそも食事をする機会が乏しい。そのため朝コンビニでお昼ごはんを買って出勤したり、 路上販売しているお弁当で済ましたりします。しかし、どうしても偏った食事になりがちです。

そうなんです。結果的に毎日同じような食事をとることになってしまい、食事に無頓着で代謝が落ちてきた30代後半~40代の男性社員の健康診断結果が悪化する。当社が経験した背景にある事実だと思います。

ーこの課題を解決するために「ぐーばる」を考えられたのですね?

 健康に配慮した食事を社員が自主的にとるようにできないものかと、このしくみを考え、2011年7月に特許登録しました。

ーレストランを社員食堂のように利用できるサービスは他社にもありますが?

 はい、知っています。しかし、似て全く非なるサービスです。 他社のサービスは、企業負担による社員の食費軽減、つまりお得にランチが食べられますよ、というサービスが殆どです。 ぐーばるの目的は、食費負担の軽減、食事機会の提供はもちろんですが、さらに、ランチを通して社員に健康への意識を持ってもらい、 食に対する行動変容を促していくことで健康体を維持していただき、企業の健康経営を支援することです。

ー具体的にどのような内容ですか?

 例えば、牛丼弁当を毎日食べる社員へ会社が食費を半額負担してあげると何を食べると思いますか? 結局、その社員は牛丼弁当を毎日半額で食べることになりませんか? それでは意味がありませんね。ぐーばるは「何を食べたか」を重視しています。今日食べた食事の内容に依って明日の食事のアドバイスを行います。また、食べた食事の履歴管理を行います。 食べた食事の画像、その食事のカロリーや塩分を記録することができます。 企業には、個人情報に配慮した社員の食行動の情報を還元し、健康経営に役立てていただいています。

ー素晴らしいサービスですね。ぐーばるが企業の健康経営支援を目的とした社員の健康維持を具体的にサポートするサービスということが良く判りました。 ところで平成26年度の東京都新製品・新技術開発助成事業に採択されていますね。資料を拝見しましたが、産学協同でぐーばるの研究開発を行われたのですか?

 首都大学東京、国立研究開発法人産業技術総合研究所、東京都立産業技術研究センターの諸先生方と1年間チームを組んで取り組みました。先生方には多大なご支援ご教示をいただきました。 当社だけではここまでのしくみを創り上げることは出来なかったと思います。今後も継続して行く予定です。

ー最後に、今後の展開をお聞かせください。

 我が国は少子高齢化が進行し、生産年齢人口の減少高齢化も更に進行することは自明です。少子高齢化や定年延長に伴い、従業員の平均年齢が上昇し、 加齢とともに生活習慣病の重症化が増える構造的な課題を企業は内包しています。厚生労働省人口動態統計によると40代後半の男性は40代前半に比べて、心筋梗塞の発症率は1.7倍だそうです。 重症疾患で倒れる従業員の多くは自己管理していないことがレセプトや健診データからわかってきています。

 厚生労働省の調査によると、1万人規模の企業では年間10数名の重症疾患が新規に発症しているものの、発症者の3分の2は未治療(未受診)であることがわかりました。 健診は受けても自らのリスクを認識せず、医療機関への受診や生活習慣の改善といった行動変容に結びつかない状況です。

 近年、政府、経団連、東京商工会議所も「健康経営」という言葉や概念を用いた施策を発表し、日本政策投資銀行は企業の健康経営格付を行っています。 これらの現象は、従業員の健康が企業や社会にとって重要不可欠な資本であることを再認識していると共に、企業にとって従業員は最も重要な経営資源であることを改めて認識し、従業員への健康投資を企業へ促すものです。 この従業員の健康に密接に関連しているのが毎日の食事ではないでしょうか。

 つまり、従業員の健康管理、健康促進は、ゴーイングコンサーンとしての日本企業にとって重要な経営課題となっており、その経営課題の一つが従業員の食事です。

 しかし、従業員の毎日の食事の実態は、労働人口の集中する地域では「昼食難民」という言葉に表されるように、地域の飲食店が供給する客席数が食事を必要とする労働人口に対し足りていません。 また都市部の複合ビルに入居する飲食店の価格設定は、従業員が毎日の食事で利用できる食費予算を上回っています。適切な食事機会がないこと、食費負担が大きいことが、従業員の偏った安易な食事や欠食を助長しています。 これらのことが原因で、健康状態が悪化する人、改善しない人がおり、やがて発病し、就労が困難となり、本人、家族、企業、社会にとって大きな損失となっています。

 ぐーばるを通して、日常生活の中で従業員の健康を維持促進し、公共財である従業員の毀損と社会の損失を防ぎ、健康で永く企業に勤続する人材確保を第一義の目的とし、この基盤に二次的・三次的事業展開を行います。そして、近い将来、企業の求人情報の福利厚生欄に社会保険と同列に「ぐーばる」と列記されるようにしたいと思います。